重要ポイント:犬が耳の後ろをこすってブルブルする回数が増えたら、外耳炎の可能性があります。
対処法:耳の中の臭い、赤み、耳垢の量をチェックし、異常があれば早めに動物病院へ。
予防策:過度な耳掃除は避け、アレルギー対策と適切な体重管理が大切です。
「あれ?うちの子、最近やたらと耳をガリガリしてブルブルしてるな…」そんな愛犬の変化に気づいたあなた。実は私も2018年の梅雨時期、診察室で同じような相談を毎日のように受けていました。ふと見ると、耳を後ろ足でカリカリと掻いた後、「ブルンブルン!」と激しく頭を振る姿。それはまるで、何か違和感を振り払いたいかのような必死さです。
耳のかゆみが教える危険なサイン
犬の外耳炎は、動物病院で最も多く診察される疾患の一つです。英国での大規模調査によると、[1]年間発生率は7.3%にも上ります。とはいえ、この数字だけでは実感が湧きませんよね。
さて、2019年の秋、私は横浜市にある動物病院で働いていました。ある日、ゴールデンレトリバーの「モカちゃん」が来院しました。飼い主さんは「最近、右耳ばかり掻いてるんです」と心配そうに話されました。耳の中を覗くと、茶色い耳垢がびっしり。独特の酸っぱいような臭いが漂ってきます。
実のところ、外耳炎になりやすい犬種というのが存在します。[1]バセットハウンド(5.87倍)、シャーペイ(3.44倍)、ラブラドゥードル(2.95倍)、ビーグル(2.54倍)、そしてゴールデンレトリバー(2.23倍)は、雑種犬と比較して外耳炎になる確率が高いのです。
じゃあ、なぜ耳をこすってブルブルするの?
犬の耳の構造は、人間とは大きく異なります。L字型に曲がった外耳道は、通気性が悪く湿気がこもりやすい。[2]この環境は、細菌やマラセチア(カビの一種)にとって絶好の繁殖場所となってしまうのです。
⚠️ 緊急度の見極めポイント
以下の症状が3つ以上当てはまる場合は、48時間以内の受診をおすすめします:
・耳からの悪臭
・茶色または黄色い耳垢の増加
・耳介の赤みや腫れ
・頭を傾けている(斜頸)
・耳を触ると嫌がる・怒る
意外と知らない外耳炎の本当の原因
ところで、外耳炎の原因って何だと思いますか?「耳が汚れているから」と思われがちですが、実はそれは結果であって原因ではありません。
最も多い原因は、実はアレルギー性皮膚炎なのです。[3]犬アトピー性皮膚炎の犬の83%は外耳炎を併発しており、35%は耳の症状のみが現れることもあります。食物アレルギーの場合も、80%の確率で外耳炎を伴います。
2020年の春、私が経験した印象深い症例があります。コッカースパニエルの「ココ」は、3歳になってから急に両耳の外耳炎を繰り返すようになりました。点耳薬で一時的に良くなるものの、1ヶ月もすると再発。飼い主さんと相談し、アレルギー検査を実施したところ、鶏肉と小麦に強い反応が出ました。フードを変更してから、耳の症状はピタリと治まったのです。
過度な耳掃除がかえって悪化させる?
「清潔にしなきゃ!」と思うあまり、毎日のように耳掃除をしていませんか?実は、これが逆効果になることもあるんです。
健康な犬の耳には、「マイグレーション」という自浄作用があります。耳垢を自然に外へ押し出す機能です。しかし、綿棒での過度な掃除は、この機能を妨げ、かえって炎症を引き起こす原因となります。
ふと思い出すのは、2017年の夏。トイプードルの「プリン」の飼い主さんは、とても几帳面な方でした。「毎日欠かさず耳掃除してるのに、なぜか耳が赤くなって…」と困惑されていました。耳道を内視鏡で確認すると、掃除のしすぎで傷ついた皮膚が見つかりました。耳掃除を週1回に減らし、動物病院専用の洗浄液に変更したところ、2週間で改善しました。
体重管理が耳の健康に影響する!?
驚くかもしれませんが、[4]最新の研究では、肥満の犬は正常体重の犬と比較して外耳炎になりやすいことが分かっています。40kg以上の大型犬では、10kg未満の小型犬と比べて2.35倍も外耳炎のリスクが高いのです。
これには理由があります。肥満により皮脂の分泌が増加し、耳道内の環境が細菌や真菌の繁殖に適した状態になってしまうのです。それに、太っていると耳の通気性も悪くなりがちです。
✓ 自宅でできる耳のチェックポイント
- ・耳の中の色:健康な耳はピンク色
- ・耳垢の量と色:少量で薄い黄色が正常
- ・臭い:無臭または軽い犬特有の匂い
- ・皮膚の状態:傷や赤みがないか
- ・愛犬の反応:触っても嫌がらないか
慢性化する前に知っておきたいこと
外耳炎は、適切に治療すれば1〜2週間で改善することが多いです。でも、なぜか繰り返してしまうケースがあります。
再発性外耳炎の場合、原因となる基礎疾患の管理が不可欠です。[5]例えば、アレルギーが原因なら、アレルゲンの除去や投薬による管理。内分泌疾患(甲状腺機能低下症など)が原因なら、その治療が必要になります。
実は、慢性化すると耳道に不可逆的な変化が起こることがあります。耳道の肥厚、狭窄、石灰化などです。こうなると、最悪の場合、全耳道切除術という大がかりな手術が必要になることも。だからこそ、早期発見・早期治療が大切なのです。
獣医師が本音で語る治療のポイント
15年間の臨床経験から言えることは、「外耳炎は必ず原因がある」ということです。単なる耳の汚れではありません。
治療は通常、以下のステップで進めます:
- 耳垢の顕微鏡検査(細菌、真菌、寄生虫の確認)
- 耳道の洗浄(鼓膜の状態を確認後)
- 点耳薬の処方(抗菌薬、抗真菌薬、ステロイドの配合薬)
- 基礎疾患の検索と治療
最近では、1週間効果が持続する点耳薬も登場しています。毎日の点耳が難しい子や、耳を触られるのを嫌がる子には朗報ですね。
それでも、私が最も重要だと考えるのは「予防」です。適切な体重管理、アレルギー対策、そして過度にならない耳のケア。これらを心がけることで、多くの外耳炎は予防できるのです。
愛犬が耳をこすってブルブルする姿は、「助けて」のサインかもしれません。でも、慌てる必要はありません。早めに気づいて適切に対処すれば、ほとんどの外耳炎は改善します。大切なのは、日頃から愛犬の様子をよく観察し、変化に気づくこと。そして、「いつもと違うな」と感じたら、迷わず動物病院へ相談することです。あなたの愛犬が、快適な毎日を送れますように。耳の健康は、全身の健康につながっているのですから。
よくある質問
耳掃除はどのくらいの頻度で行えばいいですか?
健康な耳なら月1〜2回で十分です。垂れ耳の犬種や耳毛が多い子は週1回程度。ただし、獣医師の指示がある場合はそれに従ってください。過度な掃除は逆効果になることがあります。
市販の耳掃除グッズを使っても大丈夫ですか?
低刺激性の犬用イヤークリーナーなら使用可能ですが、綿棒の使用は避けましょう。耳垢を奥に押し込んだり、耳道を傷つける恐れがあります。不安な場合は動物病院で相談してください。
片耳だけ症状が出ることもありますか?
はい、あります。異物(草の実など)が原因の場合は片耳のみのことが多いです。ただし、アレルギーが原因でも初期は片耳から始まることがあるので、注意が必要です。
外耳炎は他の犬にうつりますか?
通常の細菌性・真菌性外耳炎は他の犬にうつりません。ただし、耳ダニ(耳疥癬)が原因の場合は感染する可能性があるため、多頭飼育の場合は全頭の検査をおすすめします。
治療費はどのくらいかかりますか?
初診時は検査を含めて5,000〜10,000円程度が一般的です。点耳薬は1,000〜3,000円程度。ただし、重症化している場合や基礎疾患の検査が必要な場合は、費用が増加することがあります。
飼い主の声
「うちのビーグルは3歳の時に外耳炎になりました。最初は片耳だけだったのに、気づいたら両耳に。獣医さんに『アレルギーかも』と言われて半信半疑でしたが、フードを変えたら嘘のように良くなりました。今は月1回の耳チェックを欠かさずしています」(東京都・40代女性)
「ラブラドールを飼っています。夏になると必ず外耳炎になっていましたが、体重を5kg減らしてからは全く症状が出なくなりました。肥満が関係してるなんて思いもしませんでした。耳の健康のためにも体重管理は大切ですね」(神奈川県・50代男性)
参考文献
- O'Neill DG, Volk AV, Soares T, et al. Frequency and predisposing factors for canine otitis externa in the UK - a primary veterinary care epidemiological view. Canine Med Genet. 2021 Sep 7;8(1):7. doi: 10.1186/s40575-021-00106-1.
- Secker B, Shaw S, Atterbury RJ. Pseudomonas spp. in Canine Otitis Externa. Microorganisms. 2023;11(11):2650. doi: 10.3390/microorganisms11112650.
- Bajwa J. Canine otitis externa — Treatment and complications. Can Vet J. 2019 Jan;60(1):97–99. PMC: PMC6294027.
- Ponn PC, Tipold A, Volk AV. Can We Minimize the Risk of Dogs Developing Canine Otitis Externa?—A Retrospective Study on 321 Dogs. Animals. 2024;14(17):2537. doi: 10.3390/ani14172537.
- Nuttall T. Managing recurrent otitis externa in dogs: what have we learned and what can we do better? J Am Vet Med Assoc. 2023 Jun 1;261(S1). doi: 10.2460/javma.23.01.0002.
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