舌下血腫とは:犬の舌の裏側に血液がたまって膨らむ状態で、外傷や血液凝固異常が原因となることが多い。
緊急性:呼吸困難や舌の腫れがある場合は、緊急受診が必要。
治療法:原因により異なるが、基礎疾患の治療や外科的処置が必要な場合も。
不安でたまらない!舌の裏の膨らみが示すサイン
舌の裏側の膨らみ、それは内出血の可能性が高いです。でも慌てないで。
2019年の秋、埼玉県のある動物救急センターで働いていた頃の話です。夜中の2時過ぎ、ゴールデンレトリバーのマックス(仮名・8歳)が飼い主様と駆け込んできました。「さっきから舌がおかしいんです!」
確認すると、舌の下にゴルフボール大の赤紫色の腫れ物が。これが私が初めて遭遇した典型的な舌下血腫でした[1]。飼い主様は涙目で「がんですか?」と。違います、まずは落ち着いて状況を把握しましょう。
⚠️ 緊急受診が必要な症状
• 舌が口の外に出たまま戻らない
• 呼吸がゼーゼーと苦しそう
• よだれが止まらず、血が混じっている
• 舌全体が腫れて紫色になっている
じわじわ広がる不安...舌下血腫という病気の正体
舌下血腫(ぜっかけっしゅ)。
難しい名前ですよね。簡単に言えば「舌の下に血がたまってできる血豆の親玉」みたいなもの。人間でも歯科手術後に起こることがあります[2]。
さて、なぜこんなことが起きるのか?
血がたまる3つの主な原因
1. 外傷によるもの
実は一番多いのがこれ。硬いおもちゃを噛んだり、散歩中に枝をくわえたり。2021年に診た症例では、ビーグルのチョコちゃん(5歳)が庭で遊んでいた木の枝で舌の下を傷つけていました。
飼い主様は「まさかそんなことで...」と驚かれますが、意外と多いんです。
2. 血液凝固異常
これがやっかい。血小板減少症や凝固因子の異常により、ちょっとした刺激で出血しやすくなります[3]。特に免疫介在性血小板減少症(IMT)は要注意。
ある日突然、お腹にあざができたり、歯茎から出血したり。そんな症状があれば血液検査は必須です。
3. 腫瘍や唾液腺の問題
頻度は低いものの、口腔内腫瘍が原因となることも[4]。また、舌下腺の炎症や唾液腺嚢胞が血腫のように見えることもあります。
ドキドキが止まらない検査の時間
診断には段階があります。
まず視診と触診。獣医師は優しく口を開けて、腫れの位置、大きさ、硬さを確認します。「痛がるかもしれませんが、少しだけ我慢してね」――私がいつも飼い主様にお伝えする言葉です。
必要な検査とその意味
血液検査:血小板数の確認は最重要。正常値は20~50万/μlですが、5万以下だと出血リスクが高まります[5]。
とはいえ、数値だけじゃわからない。
画像検査:レントゲンやエコーで腫瘍との鑑別を行います。2020年の症例では、一見血腫に見えた腫れが実は唾液腺嚢胞だったことも。
細胞診:針を刺して細胞を採取。「えっ、針を刺すの?」と心配される飼い主様も多いですが、診断には欠かせません。
希望の光!治療法は原因次第
治療法は原因により大きく異なります。でも安心してください、多くの場合は適切な治療で改善します。
外傷性血腫の場合
小さな血腫なら経過観察で自然吸収されることも。
ただし!大きな血腫や呼吸に影響がある場合は外科的な処置が必要です。マックスの場合も、結局は血腫の穿刺吸引を行いました。「プシュッ」という音とともに赤黒い血液が抜けていく様子に、飼い主様は顔をしかめていましたが...。
血液凝固異常が原因の場合
基礎疾患の治療が最優先。
免疫介在性血小板減少症なら、ステロイドや免疫抑制剤での治療が必要です[6]。「薬を飲ませ続けるのは心配」という声もよく聞きます。でも、適切な管理下では多くの子が普通の生活を送れるようになります。
実際、2022年に診たマルチーズのモモちゃん(7歳)は、IMTによる舌下出血でしたが、現在は投薬を続けながら元気に過ごしています。
明日への希望を胸に
舌の裏の膨らみを見つけたとき、不安でいっぱいになるのは当然です。
でも、早期発見・早期治療で多くの場合は良好な経過をたどります。15年間の経験から言えるのは、「飼い主様の観察力が愛犬を救う」ということ。
毎日の歯磨きタイムを活用して、口の中をチェックする習慣をつけましょう。そして少しでも異常を感じたら、遠慮なく動物病院へ。
あなたの愛犬が、これからも美味しくご飯を食べて、楽しく遊べる日々が続きますように。一緒に頑張りましょうね。
よくある質問(FAQ)
舌下血腫は自然に治りますか?
小さな血腫で原因が軽度の外傷なら、2~3週間で自然吸収されることもあります。ただし、大きさや原因によっては治療が必要です。獣医師の診断を受けることをお勧めします。
血腫と腫瘍の見分け方はありますか?
見た目だけでは判断が難しいです。血腫は比較的柔らかく、波動感(液体が入っている感触)がありますが、確定診断には細胞診や画像検査が必要です。
予防する方法はありますか?
硬すぎるおもちゃや骨を避ける、定期的な血液検査で健康状態を把握する、口腔内の定期チェックを行うことが大切です。
治療費はどのくらいかかりますか?
原因や治療内容により大きく異なりますが、血液検査と診察で1~2万円、外科的処置が必要な場合は5~10万円程度が目安です。ペット保険の適用も確認しましょう。
再発することはありますか?
外傷性の場合は原因を除去すれば再発は稀です。ただし、血液疾患が原因の場合は、基礎疾患の管理が重要で、定期的な検査が必要になります。
飼い主様の声
「うちのラブラドールが舌の下に大きな腫れ物ができて、本当にパニックになりました。でも先生が『血腫ですね、大丈夫ですよ』と言ってくださって。処置後は普通にご飯も食べられるようになり、今では何事もなかったかのように元気です。早めに病院に行って本当によかった」(東京都・Kさん)
「血小板減少症が原因だったなんて思いもしませんでした。舌の血腫がきっかけで病気が見つかり、今は投薬治療を続けています。最初は不安でしたが、3ヶ月経った今、数値も安定して普通の生活ができています。観察の大切さを実感しました」(神奈川県・Tさん)
参考文献
- Diagnosis and successful treatment of a caudal lingual abscess in a geriatric dog. Front Vet Sci. PMC. Available at: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC1914323/
- Sublingual Hematoma: Care Instructions. Alberta Health Services. Available at: https://myhealth.alberta.ca/health/AfterCareInformation/pages/conditions.aspx?hwid=zp4209
- 播種性(はしゅせい)血管内凝固症候群(DIC)<犬>. みんなのどうぶつ病気大百科. Available at: https://www.anicom-sompo.co.jp/doubutsu_pedia/node/1011
- 口腔腫瘍|ペット保険のFPC. Available at: https://www.fpc-pet.co.jp/dog/disease/110
- 犬の血小板減少症の症状と原因、治療法について. ペット保険のPS保険. Available at: https://pshoken.co.jp/note_dog/disease_dog/case114.html
- 免疫介在性血小板減少症(IMTP)<犬>. みんなのどうぶつ病気大百科. Available at: https://www.anicom-sompo.co.jp/doubutsu_pedia/node/1012
愛犬に異常が見られた場合は、必ず獣医師へご相談ください。
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