結論:授乳中の犬の乳房が赤く腫れ、熱を持つ、触ると痛がる、乳汁の色や性状が変わった場合は、乳腺炎の可能性があるため動物病院へ相談します。母犬の様子だけでなく、子犬が飲めているかも記録します[1][5]。
急ぐサイン:母犬がぐったりする、食べない、吐く、発熱が疑われる、乳房が急に強く腫れる、紫色や黒っぽく見える、膿や血を含む乳汁が出る場合は、当日中に病院へ連絡します[1]。
家庭でしないこと:腫れた乳房を強く揉む、つぶす、温め続ける、人用の薬や残り物の抗菌薬を使うことは避けます。写真と経過を残し、母犬と子犬の受診方法を電話で確認してください。
授乳中の母犬の乳房が、片側だけ赤く張っている。子犬は吸っているが、母犬は触られるのを嫌がる。乳腺炎は、乳房の局所変化だけで始まることもあれば、母犬の全身状態に影響することもあります。外見が似ていても、乳汁の停滞、細菌感染、外傷、乳腺腫瘍などを家庭で見分けることはできません。動物病院の受付で産後の相談を受けてきた私は、最初に「母犬が食べているか」と「子犬が全員飲めているか」を確認してきました。この記事では、乳腺炎を疑う観察点と受診までの注意を整理します。
乳腺炎で見られる乳房の変化
乳腺炎では、乳房の一部または複数が腫れる、赤くなる、熱を持つ、硬くなる、触ると痛がるといった変化が見られることがあります。乳汁がいつもと違って水っぽい、濁る、血液や膿のようなものが混じる場合もあります[1]。ただし、乳房を押して中身を確認しようとすると痛みや炎症を悪化させる可能性があるため、強く触りません。
左右で大きさが違う、子犬が特定の乳房を嫌がる、母犬が授乳姿勢を避ける、横になったまま落ち着かないという変化も記録します。被毛が多い犬では、皮膚の色や乳房の輪郭が分かりにくいことがあります。毛を剃ったり、乳頭を引っ張ったりせず、自然な状態を写真に残して相談します。
母犬が元気そうでも、乳房の変化が続く場合は通常診療で相談します。乳腺炎かどうかは、診察、乳汁の確認、必要に応じた培養や血液検査などを組み合わせて判断します。色だけで「治りかけ」「母乳だから普通」と決めません。
母犬の全身状態と子犬の飲み方を一緒に見る
| 観察する場所 | 記録する変化 | 相談時に伝えること |
|---|---|---|
| 母犬の乳房 | 左右差、腫れ、赤み、熱感、硬さ、痛み | いつから、どの乳房か、広がったか |
| 母犬の全身 | 食欲、元気、嘔吐、震え、熱っぽさ | 授乳や睡眠が普段と違うか |
| 乳汁 | 色、濁り、粘り、血や膿のようなもの | 自分で絞らず、見えた範囲を写真で示す |
| 子犬 | 吸う力、体重、鳴き続ける、冷たさ | 全頭か一部か、授乳の回数と量 |
子犬が吸っているから母犬は大丈夫、とは限りません。母犬の痛みで授乳を拒むと、子犬の摂取が足りなくなることがあります。子犬の体重が測れるなら、同じ条件で記録します。体重計がなくても、吸いつく時間、眠り方、鳴き方、兄弟との競争に負けていないかをメモします。
発熱や元気低下がある乳房の腫れは急ぐ
乳腺の変化と一緒なら、当日中に連絡するサイン
- 母犬がぐったりし、立ち上がることや子犬の世話を嫌がる
- 食べない、吐く、震える、呼吸が変わる、熱っぽい
- 乳房の腫れや赤みが短時間で強くなる、皮膚が紫色・黒っぽい
- 触らなくても痛そう、授乳姿勢を取れない、子犬を拒む
- 乳汁に血や膿のようなものが混じる、強い悪臭がある
乳腺炎が進むと母犬の全身状態が悪くなることがあります。特に、乳房の局所変化に食欲低下やぐったりが加わった場合は、家庭で経過を比べるより病院へ電話します[1]。自宅で測った体温が正常でも、病気を否定する材料にはなりません。体温測定で犬が嫌がるなら無理に繰り返さず、症状を伝えます。
乳腺炎と乳腺腫瘍は見た目だけで区別できない
乳腺炎は産後や授乳中に起きやすい一方、乳房のしこりや腫れは乳腺腫瘍など別の病気でも見られます。産後だからすべて炎症、片側だけだからすべて腫瘍というように、時期や位置だけで決めません。しこりの有無、動くかどうか、皮膚の傷、変化した日を記録して診察で伝えます。
乳房を何度も触って大きさを確かめると、犬が痛がり、授乳を避けることがあります。写真を撮るときも一度の短い確認にし、毛を分ける程度にとどめます。触診や細胞診、画像検査などが必要かは、獣医師が全身状態と合わせて判断します。
家庭で揉まず、受診まで清潔と安全を保つ
乳房の汚れが気になる場合は、病院へ確認したうえで、ぬるま湯で湿らせた清潔な布を外側に軽く当てる程度にします。強くこすらず、乾いた布で押さえます。アルコール、消毒薬、精油、人用クリーム、残っている抗菌薬を塗らないでください。
乳房を温める、冷やす、絞る、針で刺す、子犬に無理に吸わせるといった処置は、原因や状態によって危険が変わります。授乳を続けてよいか、子犬を別にするか、補助哺乳が必要かは、乳腺と母犬・子犬の診察後に決めます。自己判断で授乳方法を大きく変えず、まず電話で相談します。
受診時は母犬だけでなく子犬をどう同行させるかも確認します。母犬が移動に耐えられるか、子犬の保温をどうするか、授乳の間隔をどうするかは、季節と頭数で変わります。タオルや記録、現在のフードや薬の情報を準備しておきます。
乳房の傷や授乳環境も記録する
産後の母犬では、子犬の爪や歯が皮膚を傷つけ、そこから細菌が入ることがあります。傷があるかを確かめるために何度も乳房を触らず、見える範囲の擦れ、出血、かさぶた、腫れを写真に残します。寝床が湿っている、汚れている、母犬が同じ姿勢を取り続けているなど、環境の変化も診察で伝えます。
授乳していない雌犬の乳房が腫れた場合も、産後の張りと決めつけません。発情やホルモンの変化、しこり、皮膚の炎症など、考えるべき背景が異なります。避妊手術の有無と時期、最後の発情、腫れに気づいた日、左右差を記録し、通常診療で相談します。
病院へ連絡するときは、母犬の体調だけでなく、子犬の頭数、出生時期、体重の増減、授乳できているかを伝えます。子犬を別室へ移す、補助哺乳を始める、授乳を中止するなどの判断は、母犬の痛みと乳汁の状態を確認してから行います。母犬を責めず、記録を共有することが安全な判断につながります。
想定相談例:片側の乳房の腫れに気づいたケース
これは実在の症例ではなく、受診時の情報整理を示す想定例です。東京都の4歳の出産後雌のラブラドール「さくら」が、2026年9月5日の夜、右後ろ側の乳房だけ少し赤く、子犬がその乳頭から離れるようになったとします。母犬は食べていますが、触ろうとすると体を引きます。
飼い主さんは、腫れに気づいた時刻、右後ろ側という位置、色、子犬の吸い方、母犬の食欲と元気を記録し、写真を撮りました。強く揉まず、授乳を続けてよいかを病院へ電話で確認します。翌朝までに赤みが広がる、食べない、ぐったりするなどがあれば、通常診療を待たず再連絡します。
乳腺の位置と経過を、触りすぎずに残す
犬の乳房は前後に並んでいるため、飼い主さんの「右」「左」だけでは病院で位置が伝わりにくいことがあります。頭側・後ろ側、前から何番目か、左右差があるかを、犬を自然に横たえた写真とメモで示します。写真のために体をひっくり返したり、乳房を強く広げたりしません。
腫れの広がりを確かめようと何度も押すより、見た目、犬の姿勢、授乳の可否を同じ時間帯に観察します。母犬が動く場合は無理に固定せず、短い動画を撮るだけでも十分です。変化が分からないときは「変わらない」ではなく、観察できなかった理由も伝えます。
子犬の体重が減っている、鳴き続ける、吸いつけない、冷たく感じる場合は、母犬の乳房とは別に子犬の相談も必要です。補助哺乳や保温は頭数と体重で方法が変わるため、製品の説明だけで決めません。母犬と子犬をどう連れて行くかを、電話で確認してください。
想定相談例:乳汁の変化と母犬の元気低下
こちらも実在の症例ではありません。愛知県の6歳の出産後雌のビーグル「ゆず」が、2026年9月6日の朝、乳汁がいつもより濁って見え、昼から食事を残し始めたとします。子犬2頭のうち1頭は吸う時間が短く、鳴く回数が増えています。
この場合、乳汁を絞って確認したり、市販薬を使ったりせず、母犬の全身状態と子犬の変化をまとめて当日中に病院へ相談します。母犬の乳腺炎の評価と、子犬の栄養・保温の相談を同時にできるよう、出産日、頭数、体重の記録を準備します。
授乳の継続や補助哺乳は病院に確認する
乳房に異常があるとき、すべての乳房を同じ扱いにするとは限りません。炎症の位置、乳汁の状態、母犬の痛み、子犬の健康で、授乳を続けられるかの判断が変わります。家庭で乳房を空にしようと絞ったり、子犬を無理に誘導したりせず、病院へ具体的に確認します。
補助哺乳を行う場合も、子犬の体重や吸う力に合わせた量・回数が必要です。母犬が横になれない、子犬を押しのける、子犬が冷たいなどの変化があれば、乳腺の問題だけでなく母子全体の相談として伝えます。受診までの保温や移動方法も、季節と頭数を添えて聞いてください。
母犬の記録と子犬の記録を別々にしてしまうと、授乳と体調の関係が分かりにくくなります。乳房の写真、母犬の食事と元気、子犬ごとの体重や授乳の様子を同じ時刻に並べます。急な変化があるときは記録を完成させることより、病院への電話を優先します。
よくある質問
Q. 犬の乳房が少し赤いだけなら様子見でよいですか?
A. 元気があっても、赤みや腫れが続く、熱っぽい、触ると嫌がる、子犬が吸いにくそうなら相談します。短時間で広がる、食欲低下やぐったりがある場合は当日中に連絡してください。
Q. 乳腺炎が疑われる乳房を揉んでもよいですか?
A. 強く揉んだり絞ったりしないでください。痛みや炎症を悪化させたり、犬が授乳を嫌がったりする可能性があります。授乳や乳房の扱いは、診察した獣医師の指示に従います。
Q. 乳汁に血が混じったらすぐ病院へ行くべきですか?
A. 血が混じる、濁る、膿のように見える、悪臭がある場合は病院へ相談します。母犬の食欲低下、発熱が疑われる、乳房の腫れや痛みがあれば、量に関係なく早急な連絡が必要です。
Q. 子犬が母乳を飲めていれば母犬は大丈夫ですか?
A. 子犬が飲めていても母犬の乳房の炎症は否定できません。母犬の乳房、食欲、元気と、子犬の吸う力や体重を一緒に見て、変化があれば相談してください。
Q. 乳腺のしこりは産後の張りと考えてよいですか?
A. 産後の変化と乳腺炎、乳腺腫瘍などを見た目だけで区別することはできません。しこりの位置、発見日、痛み、赤み、母犬の全身状態を記録し、獣医師に確認してもらいます。
飼い主の声
想定相談例です。静岡県・30代の飼い主が、授乳中の母犬の乳房を毎日触って確かめるのではなく、左右の写真と子犬の飲み方を記録したことで、腫れが広がった時点を病院へ伝えやすかったという場面です。
想定相談例です。北海道・40代の飼い主が、母犬の乳汁だけでなく食欲と子犬の体重もメモし、電話相談の際に「母犬の元気低下と子犬1頭の吸う時間の短さ」を同時に伝えられたという場面です。
まとめ
授乳中の犬の乳房が赤い、熱い、腫れている、硬い、痛そう、乳汁が変わったときは、乳腺炎を含めて動物病院へ相談します。母犬の食欲と元気、発熱が疑われる様子、子犬の飲み方や体重も一緒に記録してください。写真は診察の補助になりますが、触って確かめることを優先しません。
母犬がぐったりする、食べない、吐く、乳房が急に紫色や黒っぽくなる、血や膿のような乳汁が出る、授乳できない場合は、当日中に病院へ連絡します。家庭で揉む、絞る、薬を塗るのではなく、母犬と子犬を安全に保ち、受診先へ状態を正確に伝えることが大切です。
迷ったときは、乳房の見た目を家庭で診断しようとせず、母犬と子犬をどのように観察し、いつ連絡すべきかを病院へ確認します。早めに相談することは、必ず重い病気と決めることではありません。必要な診察と母子のケアを選ぶために、変化を共有するための大切な一歩です。
本記事はイヌラバ博士が監修した一般情報であり、個別の診断や治療に替わるものではありません。
愛犬に異常が見られた場合は、必ず獣医師へご相談ください。
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