結論:犬のフィラリア症(犬糸状虫症)は、蚊が運ぶ寄生虫が心臓や肺の血管に住みつく病気です。命に関わりますが、予防薬でほぼ確実に防げます[1][2]。
気づきにくさ:初期はほとんど無症状。進むと最も多いのが咳で、運動を嫌がる、呼吸が苦しそう、おなかがふくれる(腹水)などが現れます[1]。
予防の要点:蚊が出はじめてから約1か月後〜いなくなって約1か月後まで、毎月の予防薬を欠かさず。投与前にはフィラリア検査を。米国では通年予防が推奨されています[2]。
蚊が運ぶ“糸のような虫”──フィラリアの正体
フィラリア症の原因は、犬糸状虫(けんしじょうちゅう、Dirofilaria immitis)という寄生虫です。蚊が、感染した動物から幼虫を吸い、別の犬へと運びます[1]。体内に入った幼虫は数か月かけて成長し、最終的に心臓や肺の血管に住みつくのです。成虫はそうめんのように細長く、数十センチにもなります。
やっかいなのは、進行のゆっくりさ。多くの犬は、初期にはこれといった症状を見せません[1]。だからこそ、気づいたときには血管がダメージを受けている、ということも珍しくないのです。
見逃したくないサイン──最初は“軽い咳”から
症状が出るとき、最も多いのが咳です[1]。さらに進むと、こんな変化が現れます。
フィラリア症で見られる主なサイン
- 咳(最も多い初期サイン)
- 散歩を嫌がる、すぐ疲れる(運動不耐)
- 呼吸が苦しそう、荒い
- おなかがふくれる(腹水=右心不全のサイン)
- 失神、やせてくる
先ほどのゴンタくんは、「散歩の途中で座り込む」「軽く咳をする」という段階で受診できたのが、不幸中の幸いでした。治療は体への負担が大きく、時間もかかります。だからこそ、症状が出る前の“予防”が、何よりものを言うのです。
ほぼ100%防げる──予防薬の「時期」と「順番」
うれしいことに、フィラリアは予防薬でほぼ確実に防げます[1][2]。ただし、飲ませ方には“理屈”があります。ここを誤解している方が、実に多いのです。
予防薬は「もう体に入った幼虫」を駆除する薬
毎月の予防薬は、蚊が刺すのを防ぐものではありません。すでに体内に入った幼虫を、成虫になる前にやっつける薬です。だから、蚊が出はじめてから約1か月後に始め、蚊がいなくなってから約1か月後まで続ける。この“前後1か月”が肝心。最後の1回を省くと、せっかくの予防が水の泡になりかねません。
⚠️ 投与前に必ずフィラリア検査を
- すでに感染している犬に予防薬を与えると、まれに重い副作用が出ることがある
- そのため、シーズン前に血液検査で陰性を確認してから始める
- 前年の投与を忘れた・もらい忘れた年がある場合は、とくに検査を
米国では「通年予防」が主流
アメリカ犬糸状虫協会(American Heartworm Society)は、年1回の検査と、1年を通じた予防薬の投与をすすめています[2]。子犬は、製品の表示が許す範囲でできるだけ早く(遅くとも生後8週ごろまでに)始めるのが目安です[2]。日本でも温暖化で蚊の季節が延びており、通年予防という選択肢が広がっています。お住まいの地域に合わせて、かかりつけの獣医師に相談しましょう。
よくある質問
Q. 去年の予防薬が少し余っています。今年もそのまま使っていい?
A. まずは今シーズンのフィラリア検査を受けてください。前シーズンに飲み忘れがあると感染している可能性があり、未検査のまま投与すると副作用のリスクがあります。残薬の使用可否も含め、獣医師に確認しましょう。
Q. 蚊をあまり見ない年でも予防は必要?
A. 必要です。たった1匹の蚊でも感染は成立します。見かけが少ない年でも、地域に蚊がいる以上、決められた期間の予防を続けるのが安全です。
Q. 完全室内飼いならフィラリア予防はいらない?
A. 蚊は室内にも入ってきます。窓やドアの開閉、ベランダ、玄関から侵入するため、室内飼いでも予防が推奨されます。生活環境に合わせて獣医師に相談してください。
Q. 予防薬にはどんな種類がありますか?
A. 毎月の飲み薬(おやつタイプ)、皮膚に垂らすスポットタイプ、年1回前後の注射タイプなどがあります。ノミ・マダニ予防を兼ねる製品もあります。愛犬に合うものを獣医師と選びましょう。
Q. もし感染していたら、治せますか?
A. 治療法はありますが、成虫の駆除は体への負担が大きく、安静管理も必要で、時間と費用がかかります。重症度によっては手術が必要なことも。だからこそ、感染前の予防が最も大切です。
飼い主の声
「保護犬を迎えた春、まず動物病院でフィラリア検査をしました。陰性とわかってから予防薬をスタート。先生に『前後1か月が大事』と教わり、最後の1回まできっちり続けています。」(栃木県・50代女性)
「室内飼いだから不要だと思い込んでいました。でも蚊は普通に家に入ってくるんですよね。獣医さんの話を聞いて、今は通年予防に。安心して夏を過ごせるようになりました。」(東京都・40代男性)
“防げる病気”を、防ぎきる
フィラリアは、命に関わる重い病気です。けれど、毎月の予防薬という確かな手段があります。やることは、シーズン前の検査と、決められた期間の投与。たったそれだけで、愛犬をこの病気から守りきれるのです。
夕暮れの散歩道、愛犬が立ち止まって空を見上げる――そんな何気ない時間を、これからも当たり前に続けるために。今年の予防、まだなら今日、かかりつけの動物病院に予定を聞いてみませんか。早めの一歩が、来年の夏の安心につながります。気がかりがあれば、遠慮なく獣医師に相談してくださいね。
本記事はイヌラバ博士が監修した一般情報であり、個別の診断や治療に替わるものではありません。愛犬に異常が見られた場合は、必ず獣医師へご相談ください。
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