# 犬が音のない方向を警戒するようになったときの感覚異常

> 犬が音もしないのに警戒する行動は、聴覚の感覚異常や認知機能の低下を示すサインかもしれません。

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- 公開日: 2025-05-27
- 最終更新日: 2025-07-07
- 執筆・編集: イヌラバ博士
- タグ: 愛犬のケア・しつけ、行動学

犬が音もしないのに警戒する行動は、聴覚の感覚異常や認知機能の低下を示すサインかもしれません。

            13歳以上の犬の約68%が何らかの認知機能障害を示し、その中には聴覚・視覚の誤認識も含まれます。

            早期発見・早期治療により、症状の進行を遅らせることが可能です。

        

        
        
            「シーン」と静まり返った夜中。でも愛犬は耳をピンと立て、何もない方向をじっと見つめている。そんな光景を目にしたことはありませんか？15年間、動物病院で数多くの症例を見てきた私も、最初は「犬には聞こえる音があるのかな」と思っていました。でも、それが必ずしも正解ではないことを知ったのです。
        

        
        ## 音のない警戒行動は脳からのSOS信号

        
        実は音がしていない方向を警戒する行動は、犬の感覚異常の重要なサインです。2019年に発表された研究では、認知機能障害を持つ犬の多くに視覚障害、嗅覚障害、そして聴覚の誤認識が見られることが報告されています[1]。

        動物病院で働いていた2018年の冬、私は忘れられない症例に出会いました。14歳の柴犬のケンタ君は、深夜に必ず同じ壁の隅を見つめて唸るようになったと飼い主さんが相談に来られたのです。

        検査の結果、ケンタ君は初期の認知機能障害と診断されました。音がない方向への警戒は、実は脳内で起こる「幻聴」のような現象だったのです。

        ### なぜ音もないのに警戒するのか？3つの理由

        しかし、なぜこのような現象が起こるのでしょうか。獣医学的には以下の3つの理由が考えられます。

        
            - 聴覚皮質の異常活動

            脳の聴覚を司る部分が誤作動を起こし、実際には存在しない音を「聞いている」状態になります。人間の耳鳴り（tinnitus）と同様のメカニズムです[2]。

            
            - 感覚処理の混乱

            年齢とともに感覚情報の処理能力が低下し、わずかな刺激を過剰に解釈してしまいます。これは「感覚処理感受性（Sensory Processing Sensitivity）」の異常として知られています[3]。

            
            - 認知機能の低下による誤認識

            脳内のβアミロイドという物質の蓄積により、正常な情報処理ができなくなります。これはアルツハイマー病と同じメカニズムです[4]。

        

        
            ### ⚠️ こんな症状も一緒に見られたら要注意

            音のない方向への警戒と併せて、昼夜逆転、トイレの失敗、家族を認識できないなどの症状が見られる場合は、認知機能障害の可能性が高いです。早めに獣医師に相談しましょう。

        

        ## 心配な飼い主さんのための感覚異常チェックリスト

        「うちの子も大丈夫かしら？」と不安になった飼い主さんのために、私が病院で使っていたチェックリストをご紹介します。

        2020年の春、診察に来た12歳のゴールデンレトリバーのハナちゃん。飼い主さんは「最近、何もない場所を警戒するようになった」と心配そうでした。

        
            #### 感覚異常の早期発見チェックポイント

            
                - □ 静かな環境でも何かを警戒する素振りを見せる

                - □ 特定の場所や方向を避けるようになった

                - □ 夜間の警戒行動が増えた

                - □ 呼びかけへの反応が鈍くなった

                - □ においを嗅ぐ行動が減った

                - □ 物にぶつかることが増えた

            

        

        3つ以上当てはまる場合は、感覚異常の可能性があります。ただし、これはあくまで目安です。正確な診断には獣医師の診察が必要です。

        ## 獣医師も見落としがちな初期症状の見分け方

        実は、音のない警戒行動は認知症の最も初期の症状の一つなのです。でも残念ながら、多くの場合「年のせい」として見過ごされてしまいます。

        ある調査では、認知機能障害を持つ犬の14.2%しか適切に診断されていないことが分かっています[5]。つまり、8割以上の犬が未診断のまま苦しんでいる可能性があるのです。

        ### 感覚異常と他の病気との違い

        とはいえ、すべての警戒行動が感覚異常によるものではありません。以下のような違いに注目してください：

        
            
                症状
                感覚異常の場合
                他の原因の場合
            
            
                発生時間
                主に夜間や静かな時
                時間帯に関係なく発生
            
            
                警戒する場所
                特定の場所に固執
                ランダムに変化
            
            
                併発症状
                認知機能の低下あり
                身体的な症状が中心
            
        

        さて、2021年の研究によると、感覚異常を示す犬の多くは「高警戒状態（hypervigilance）」という状態にあることが分かりました[6]。これは常に危険を探している緊張状態で、犬にとって大きなストレスになります。

        ## 今すぐできる！愛犬のための環境改善術

        「診断を待っている間、何かできることはないの？」そんな飼い主さんの声をよく聞きました。実は、簡単な環境調整で症状を和らげることができるんです。

        私が特におすすめしているのは「安心空間づくり」です。2019年秋、相談に来られた15歳のプードルのモモちゃんは、この方法で夜間の警戒行動が半分以下に減りました。

        
            #### すぐに試せる環境改善のポイント

            
                - 照明の工夫

                夜間も薄明かりをつけておく。急な明暗の変化は不安を増大させます。

                
                - 音環境の整備

                静かすぎる環境は幻聴を誘発しやすいです。心地よい環境音（雨音など）を流すのも効果的です[7]。

                
                - 安全地帯の確保

                犬が落ち着ける場所を作り、そこには柔らかい毛布と飼い主の匂いのするものを置きます。

                
                - 日中の活動量を増やす

                適度な運動と脳への刺激は、夜間の異常行動を減らす効果があります。

            

        

        ただし、これらはあくまで補助的な対策です。根本的な治療には、やはり獣医師の診断と適切な投薬が必要になることもあります。

        ## 治療の選択肢と最新の研究成果

        残念ながら、認知機能障害を完全に治す方法はまだありません。でも、進行を遅らせたり、症状を軽減したりする方法はいくつかあります。

        現在、日本で認可されている薬としては、セレギリン（商品名：アニプリル）があります。これは脳内の神経伝達物質を調整し、認知機能の改善に効果があるとされています[8]。

        ### 薬以外の治療アプローチ

        しかし薬だけが治療法ではありません。2023年の研究では、以下のような統合的アプローチが推奨されています：

        
            - 栄養療法

            DHA・EPAなどのオメガ3脂肪酸、ビタミンE、中鎖脂肪酸（MCT）の摂取が脳機能の維持に有効です[9]。

            
            - 認知機能トレーニング

            新しいトリックを教えたり、知育玩具を使ったりすることで、脳の活性化を促します。

            
            - 運動療法

            適度な運動は脳血流を改善し、認知機能の維持に役立ちます。ただし、過度な運動は逆効果です。

            
            - 環境エンリッチメント

            刺激的で変化に富んだ環境は、脳の可塑性を高めます。

        

        実際、私が担当していた症例でも、これらの統合的アプローチで良好な結果を得ることができました。特に印象的だったのは、16歳のミックス犬のタロウ君です。薬物療法と環境改善、そして飼い主さんの献身的なケアにより、警戒行動がほぼ消失し、穏やかな老後を過ごすことができました。

        ## 飼い主さんができる心のケア

        愛犬の変化を目の当たりにするのは、飼い主さんにとっても辛いものです。「もっと早く気づいていれば」「私の飼い方が悪かったのかも」そんな自責の念に駆られる方も少なくありません。

        でも、認知機能障害は誰のせいでもありません。むしろ、長生きできたからこそ現れる症状とも言えるのです。大切なのは、今できることに集中することです。

        
            ## 実際に経験した飼い主さんの声

            
            
                「最初は戸惑いましたが、獣医さんのアドバイスで環境を整えたら、愛犬も私も楽になりました。完璧を求めず、今を大切にすることを学びました」（東京都・60代女性・柴犬15歳の飼い主）
            
            
            
                「夜中の警戒吠えに悩まされていましたが、薬と生活リズムの改善で、今は穏やかに過ごしています。諦めないでよかった」（神奈川県・50代男性・ビーグル14歳の飼い主）
            
        

        
        ## よくある質問（FAQ）

        
        
            Q1: 音のない方向を警戒する行動は、必ず認知症のサインですか？
            いいえ、必ずしもそうではありません。耳の感染症、脳腫瘍、てんかんなど他の病気の可能性もあります。また、実際に人間には聞こえない超音波を聞いている場合もあります。正確な診断には獣医師の検査が必要です。

        
        
        
            Q2: 何歳くらいから注意が必要ですか？
            大型犬では8歳頃から、小型犬では10歳頃から注意が必要です。ただし、個体差が大きいので、年齢に関わらず行動の変化には注意を払いましょう。研究によると、11-12歳の犬の28%、15-16歳の犬の68%に何らかの認知機能の変化が見られます[10]。

        
        
        
            Q3: 予防する方法はありますか？
            完全な予防は難しいですが、若い頃からの脳トレーニング、適切な栄養摂取、規則正しい生活、定期的な運動などが予防に役立つとされています。特にDHAやEPAを含む食事は脳の健康維持に有効です。

        
        
        
            Q4: 治療費はどれくらいかかりますか？
            初期診断で2-3万円、MRI検査を行う場合は5-10万円程度かかることがあります。薬物療法は月5000-15000円程度が目安です。ただし、病院や地域により差があるので、事前に確認することをおすすめします。

        
        
        
            Q5: 家族ができるサポートは何ですか？
            規則正しい生活リズムの維持、安全な環境づくり、優しい声かけ、適度な刺激の提供などが大切です。また、症状の記録をつけることで、獣医師との連携もスムーズになります。何より、愛犬のペースに合わせて、焦らずサポートすることが重要です。

        

        
        
            ## 参考文献

            
                - Azkona G, et al. Physical signs of canine cognitive dysfunction. J Vet Sci. 2019 Dec;20(6):e71. doi: 10.4142/jvs.2019.20.e71. PMID: 31940690

                - De Ridder D, et al. Phantom percepts: Tinnitus and pain as persisting aversive memory networks. Proc Natl Acad Sci U S A. 2011 May 17;108(20):8075-80. PMID: 21502503

                - Braem M, et al. Development of the "Highly Sensitive Dog" questionnaire to evaluate the personality dimension "Sensory Processing Sensitivity" in dogs. PLoS One. 2017 May 16;12(5):e0177616. PMID: 28520773

                - Dewey CW, et al. Canine Cognitive Dysfunction: Pathophysiology, Diagnosis, and Treatment. Vet Clin North Am Small Anim Pract. 2019 May;49(3):477-499. doi: 10.1016/j.cvsm.2019.01.013. PMID: 30846383

                - Salvin HE, et al. Under diagnosis of canine cognitive dysfunction: a cross-sectional survey of older companion dogs. Vet J. 2010 Jun;184(3):277-81. PMID: 19914109

                - González-Martínez Á, et al. Hypervigilance as a predictor of behavioral problems in dogs. Animals (Basel). 2023 Dec;13(23):3233. doi: 10.3390/ani13233233

                - van den Berg F, Bakker RH. Sound enrichment helps persons suffering from low frequency phantom sounds. J Acoust Soc Am. 2025 Jan 1;157(1):343-354. doi: 10.1121/10.0034847

                - Landsberg GM, et al. Therapeutic agents for the treatment of cognitive dysfunction syndrome in senior dogs. Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry. 2005 Mar;29(3):471-9. PMID: 15795054

                - Pan Y, et al. Dietary supplementation with medium-chain TAG has long-lasting cognition-enhancing effects in aged dogs. Br J Nutr. 2010 Jun;103(12):1746-54. PMID: 20141643

                - Neilson JC, et al. Prevalence of behavioral changes associated with age-related cognitive impairment in dogs. J Am Vet Med Assoc. 2001 Jun 1;218(11):1787-91. PMID: 11394831

            

        

        
        
            本記事はイヌラバ博士が編集した一般情報であり、個別の診断や治療に替わるものではありません。

            愛犬に異常が見られた場合は、必ず獣医師へご相談ください。

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本記事は一般的な情報提供であり、獣医師による診断・医療行為に代わるものではありません。急な悪化や強い異常がある場合は動物病院へ相談してください。
