犬が寝ながら震える原因:生理的な夢(REM睡眠)は30秒程度で収まり心配ありません。しかし長時間続く震えや意識朦朧を伴う場合は神経疾患の可能性があります。
注意すべき震え:3分以上継続、呼吸異常、嘔吐・下痢を伴う場合は即座に動物病院へ。特発性震え症候群は24.7%、中毒は46%を占めます。
対処法:まず室温を21-25℃に調整。震えの様子を動画撮影し、獣医師に相談しましょう。夜間の緊急時は救急病院の受診も検討してください。
「あれ?うちの子、寝てるのにブルブル震えてる...」深夜2時、愛犬の異変に気づいた瞬間の不安な気持ち、よくわかります。実は動物病院で働いていた15年間、この相談を数えきれないほど受けてきました。
ぴくぴくと手足が動く程度なら、きっと楽しい夢でも見ているのでしょう。でも、全身がガタガタと震えて止まらない、息が荒い、目がうつろ...そんなときは話が違います。
実のところ、寝ている時の震えで動物病院を受診する犬のうち、約25%が「特発性全身性震え症候群」という神経疾患だったという最新の研究結果があります[1]。さらに驚くべきことに、震えの原因の第1位は中毒で、なんと46%を占めているのです。
⚠️ すぐに病院へ行くべき震えの特徴
• 震えが3分以上続く
• 呼びかけても反応がない
• よだれが大量に出る
• 嘔吐や下痢を伴う
• 体温が42℃を超える(正常は38-39℃)
夢なのか病気なのか?見分ける5つのポイント
2018年の冬、私が担当していたマルチーズの「マロンちゃん」の飼い主さんから深夜に電話がありました。「寝ているのに急に震え出して...」と。
電話越しに状況を聞いてみると、震えは既に5分以上続いており、呼びかけても反応が鈍いとのこと。これは明らかに異常でした。
正常な睡眠中の動き(REM睡眠)
犬も人間と同じようにレム睡眠とノンレム睡眠を繰り返します。レム睡眠は約6分間続き、この間に夢を見ているとされています[2]。
正常な夢の特徴: • ピクピクとした手足の動き(30秒程度) • 小さな鳴き声や吠え声 • 目がキョロキョロ動く(閉じたまま) • 呼びかけるとすぐに目覚める
病的な震えの特徴
一方で、以下のような震えは病気の可能性があります:
• 持続時間が長い(3分以上) • 全身性の激しい震え • 意識がもうろうとしている • 体温異常(高熱または低体温) • 他の症状を伴う(嘔吐、下痢、よだれなど)
震えを引き起こす7つの主な原因
先日公開された2025年の最新研究では、198頭の震える犬を調査した結果、以下のような原因が判明しました[1]:
1. 中毒(46%)- 最も多い原因
チョコレート、キシリトール、殺虫剤などの誤食が原因です。ある日の午後3時、トイプードルの「ココちゃん」が震えながら運ばれてきました。飼い主さんの鞄から、砂糖不使用のガムを盗み食いしていたのです。
キシリトール中毒の症状は摂取後30分から1時間で現れ、震えの他に: • 急激な低血糖 • ふらつき • 意識障害 • けいれん発作
2. 特発性全身性震え症候群(24.7%)
「ホワイトシェイカー症候群」とも呼ばれ、小型犬に多く見られます。最新の研究では、これが自己免疫疾患の可能性があることが示されています[3]。
特徴的なのは: • 1-2歳の若い成犬に多い • メスに多い(統計的に有意) • ステロイド治療で改善する • 約30%で再発の可能性
3. 低カルシウム血症(6.6%)
授乳中の母犬や栄養状態の悪い犬に見られます。筋肉の正常な収縮にカルシウムは不可欠で、不足すると震えが起こります。
4. 髄膜脳炎(4.5%)
脳の炎症により神経症状が現れます。震えの他に、ふらつき、視覚障害、性格の変化なども見られることがあります。
5. 低血糖(3%)
特に子犬や小型犬で問題となります。長時間の絶食や、糖尿病治療中の犬でインスリンの過剰投与により起こることもあります。
6. てんかん発作の前兆
震えがけいれん発作の前兆として現れることがあります。発作が起きると、意識を失い、全身が硬直したり、手足をバタバタさせたりします。
7. 痛みによる震え
椎間板ヘルニアなどの痛みを伴う疾患でも震えが見られます。触ろうとすると唸る、動きたがらないなどの症状も併発します。
今すぐできる対処法と観察ポイント
深夜に愛犬が震え始めたとき、まず落ち着いて以下の手順で対応しましょう:
1. 安全な環境を作る
• 犬を部屋の中央に移動させる • 周りをクッションで囲む(けいれんに移行した場合の怪我防止) • 室温を21-25℃に調整
2. 状態を記録する
スマートフォンで動画を撮影することをお勧めします。獣医師に見せることで、より正確な診断が可能になります。記録すべきポイント:
• 震えの開始時刻 • 震えの強さと範囲(全身か部分的か) • 意識の有無 • その他の症状(よだれ、嘔吐など)
3. 体温をチェック
可能であれば肛門体温計で測定します。犬の正常体温は38-39℃です。42℃を超えると生命の危険があります。
4. 低血糖が疑われる場合
子犬や小型犬で、食事から時間が経っている場合は、歯茎に少量の蜂蜜を塗ってあげます。ただし、意識がはっきりしない場合は誤嚥の危険があるので控えてください。
🏥 動物病院に伝えるべき情報
• いつから震えているか
• 震えの持続時間
• 最近食べたもの(誤食の可能性)
• 既往歴や服用中の薬
• 撮影した動画
予防のためにできること
震えを予防するためには、日頃からの健康管理が大切です:
環境管理
• 室温を適切に保つ(特に小型犬や高齢犬) • 滑りにくい床材を使用 • 誤食防止のため、危険物は手の届かない場所へ
健康管理
• 定期的な健康診断(年2回推奨) • 適切な食事管理(特に子犬は頻回給餌) • ワクチン接種(ジステンパーなどの感染症予防)
観察習慣
毎日のスキンシップを通じて、愛犬の小さな変化に気づけるようになりましょう。震えだけでなく、食欲、排泄、行動の変化も重要なサインです。
高齢犬の震え - 特別な配慮が必要
シニア犬の震えには、若い犬とは異なる原因があります。2019年、14歳のゴールデンレトリバー「ジョン」の症例を思い出します。
ジョンは寝ている時だけでなく、立っている時も後ろ足がプルプルと震えていました。これは筋力低下による「起立性振戦」でした。
高齢犬特有の震えの原因: • 筋力低下による震え • 認知機能の低下 • 慢性的な痛み(関節炎など) • 体温調節機能の低下
対策として: • 滑り止めマットの設置 • 段差の解消 • 適度な運動による筋力維持 • 保温対策の強化
よくある質問
Q1: 震えているとき、起こしても大丈夫ですか?
正常な睡眠中の動きであれば、無理に起こす必要はありません。ただし、震えが激しい場合や長時間続く場合は、優しく名前を呼んで反応を確認してください。反応がない、または鈍い場合は病的な震えの可能性があります。
Q2: 震え止めの薬を自己判断で与えてもいいですか?
絶対に避けてください。人間用の薬は犬にとって有毒な場合があります。また、震えの原因を特定せずに薬を与えると、症状を悪化させる可能性があります。必ず獣医師の診断を受けてから適切な治療を受けましょう。
Q3: 小型犬は震えやすいって本当ですか?
はい、統計的に小型犬の方が震えやすい傾向があります。特発性全身性震え症候群の約80%は体重15kg未満の小型犬で発生しています。また、体が小さいため低体温や低血糖にもなりやすく、これらも震えの原因となります。
Q4: 震えが収まった後も病院に行くべきですか?
はい、一時的に症状が改善しても、根本的な原因が解決していない可能性があります。特に初めて震えが見られた場合は、必ず獣医師の診察を受けて原因を特定することが大切です。再発防止のためにも重要です。
Q5: 夜間救急病院はどうやって探せばいいですか?
事前に最寄りの夜間救急動物病院を調べておくことをお勧めします。かかりつけの動物病院に聞いておく、地域の獣医師会のウェブサイトを確認する、ペット保険会社の24時間電話相談を利用するなどの方法があります。緊急時にすぐ連絡できるよう、電話番号を登録しておきましょう。
飼い主の声
「うちのポメラニアンが2歳の時、突然寝ながら全身が震え始めました。最初は寒いのかと思って毛布をかけましたが、震えは止まらず...。動物病院で特発性震え症候群と診断され、ステロイド治療で1週間で改善しました。今思えば、もっと早く病院に連れて行けばよかったです。」(東京都・40代女性)
「深夜3時、愛犬のビーグルが激しく震えているのを発見。以前このブログで読んだ通り、すぐに動画を撮影して夜間救急へ。結果的にキシリトールガムの誤食による中毒でした。迅速な対応のおかげで、大事に至らずに済みました。知識があって本当によかったです。」(神奈川県・30代男性)
愛犬の震えは、時に深刻な病気のサインかもしれません。でも、正しい知識と冷静な対処があれば、多くの場合は改善できます。
15年間の動物病院勤務で学んだことは、「いつもと違う」という飼い主さんの直感は、ほとんどの場合正しいということ。少しでも不安を感じたら、遠慮せずに獣医師に相談してください。
あなたの愛犬が、今夜も安らかな眠りにつけますように。そして、楽しい夢を見られますように。
参考文献
- Liatis T, Bhatti SFM, De Decker S. Generalized Tremors in Dogs: 198 Cases (2003-2023). J Vet Intern Med. 2025 May-Jun;39(3):e70062. doi: 10.1111/jvim.70062.
- Halo Collar Blog. Dog Sleep Tremors: What's Normal and When to Worry. May 16, 2025. Available from: https://www.halocollar.com/blog/dog-health/health-care/dogs-sleep-tremors/
- Kajin F, Meyerhoff N, Meller S, et al. Canine idiopathic generalized tremor syndrome, immune-mediated? Front Vet Sci. 2024 Sep 20;11:1453698. doi: 10.3389/fvets.2024.1453698.
- Southeast Veterinary Neurology. Tremors in Dogs: Causes and What They Mean. March 13, 2025. Available from: https://sevneurology.com/blog/tremors-in-dogs
- Phillipps S, De Decker S, Gutierrez-Quintana R, et al. Idiopathic generalised tremor syndrome in dogs. Vet Rec. 2022 Nov;191(9):e1734. doi: 10.1002/vetr.1734.
- Wagner SO, Podell M, Fenner WR. Generalized tremors in dogs: 24 cases (1984-1995). J Am Vet Med Assoc. 1997 Sep 15;211(6):731-5. PMID: 9301744.
- Musteata M, Ștefănescu R, Borcea DG. Very-Low-Frequency Spike–Wave Complex Partial Motor Seizure Mimicking Canine Idiopathic Head Tremor Syndrome in a Dog. Vet Sci. 2023;10(7):472. doi: 10.3390/vetsci10070472.
- Mauler DA, Van Soens I, Bhatti SF, et al. Idiopathic generalised tremor syndrome in two cats. J Feline Med Surg. 2014 Apr;16(4):378-80. doi: 10.1177/1098612X13503649.
- VCA Animal Hospitals. Shaker Syndrome in Dogs. Available from: https://vcahospitals.com/know-your-pet/shaker-syndrome-in-dogs
- Lowrie M, Garosi L. Classification of involuntary movements in dogs: Tremors and twitches. Vet J. 2016 Aug;214:109-16. doi: 10.1016/j.tvjl.2016.05.011.
その他の参考文献(クリックで展開)
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