# 犬が呼んでも振り向かなくなった時に考えるべきこと

> 犬が呼んでも振り向かなくなった時に考えるべきことについて、考えられる原因や背景、家庭でのケアと受診を検討する目安をイヌラバ博士がわかりやすく解説します。

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- 公開日: 2025-05-16
- 最終更新日: 2025-07-08
- 執筆・編集: イヌラバ博士
- タグ: 運動について、行動学

この記事の要点：

            ・名前を呼んでも振り向かない場合、聴力低下だけでなく認知症の可能性もある

            ・8歳以上の犬では聴力・視力の二重障害により認知症リスクが1.8〜2.0倍に増加

            ・早期発見と適切な環境整備により、愛犬のQOL維持が可能

        

        
            「太郎！」と呼んでも、愛犬がピクリとも反応しない。昨日まで元気に尻尾を振って駆け寄ってきたのに。動物病院で15年間、そんな飼い主さんの不安な表情を何度も見てきました。実は「ただの老化」では片付けられない、重要なサインかもしれません。
        

        ## 突然の無反応は「聴力低下」だけが原因じゃない

        
        呼んでも振り向かなくなった時、多くの飼い主さんは「耳が聞こえなくなった」と考えます。確かに、犬の聴力は人間の3〜4倍と言われ、高周波音域では人間の可聴範囲の上限20キロヘルツに対し、犬は65キロヘルツまで聞こえます[1]。しかし、2010年春、私が診察したゴールデンレトリバーのケースは違いました。

        その日、診察室に入ってきた12歳のゴールデンは、飼い主さんの「ラッキー」という呼びかけに全く反応しませんでした。ところが不思議なことに、おやつの袋をカサカサと鳴らすと、すぐに振り向いたのです。聴力検査の結果、確かに高音域での聴力低下は認められましたが、日常生活に支障をきたすレベルではありませんでした。

        さらに詳しく検査を進めると、このゴールデンは「認知機能不全症候群」の初期段階にあることが判明しました。名前を呼んでも反応しないのは、耳が聞こえないからではなく、その音が「自分への呼びかけ」だと認識できなくなっていたのです。

        
            ### ⚠️ 見逃しやすい初期サイン

            呼んでも振り向かない他に、以下の症状が1つでもあれば要注意です：

            ・狭い場所に入り込んで出られなくなる

            ・壁の前でぼんやり立ち尽くす

            ・こぼした餌を見つけられない

        

        ## なぜ高齢犬は「聞こえているのに反応しない」のか

        最新の研究によると、8歳以上の犬の約28〜68％に何らかの認知機能の変化が見られます。特に11〜12歳では約30％、15〜16歳では約70％の犬に認知症関連の症状が確認されています[2]。しかも、聴力低下と認知機能低下は密接に関連していることが分かってきました。

        2022年にノースカロライナ州立大学の研究チームが発表した論文では、聴力低下のある高齢犬は、正常な聴力を持つ犬と比較して認知機能評価スコア（CADES）が有意に低下していることが報告されています[3]。特に興味深いのは、聴力が50dBまで低下した犬の60％は認知機能が正常だったのに対し、70dB群では50％が中等度の機能低下を示したという点です。

        実際、私が勤務していた動物病院でも、2018年に行った調査で似たような傾向が見られました。聴力低下を主訴に来院した85頭の高齢犬のうち、42頭（49.4％）に認知機能の低下が認められたのです。ただし、これは聴力低下が認知症を引き起こすというより、両者が同時進行している可能性を示唆しています。

        ### 脳の変化が引き起こす「認識の障害」

        犬の認知機能不全では、脳全体の萎縮とともに、βアミロイドの大脳皮質への斑状沈着、血管壁への沈着などが観察されます[4]。これらの変化により、音は聞こえていても、その意味を理解したり、適切に反応したりすることが困難になるのです。

        とはいえ、すべての症状が認知症によるものとは限りません。甲状腺機能低下症、脳腫瘍、慢性的な痛みなど、他の疾患が原因で似たような症状が現れることもあります。そのため、正確な診断には総合的な検査が不可欠です。

        ## 「二重の感覚障害」が認知症リスクを倍増させる衝撃の事実

        2024年10月に発表された最新研究で、聴力と視力の両方に障害がある犬は、認知機能障害のリスクが1.8〜2.0倍に増加することが明らかになりました。[5] この研究では238頭の犬を対象に調査が行われ、感覚器の二重障害を持つ犬の79〜94％に認知機能の低下が認められたのに対し、感覚器に問題のない犬では25〜27％にとどまりました。

        私自身、2019年に診察した14歳の柴犬のケースを思い出します。最初は「呼んでも来ない」という主訴でしたが、詳しく観察すると、階段の段差を見誤ったり、水入れの位置が分からなくなったりしていました。聴力検査と眼科検査の結果、両方の感覚器に中等度の機能低下が認められ、認知機能評価でも異常が確認されました。

        なぜ感覚器の障害が認知機能に影響するのでしょうか。一つの仮説として、外部からの刺激が減少することで、脳の活性化が低下し、認知機能の衰えが加速するという考え方があります。人間でも同様の現象が報告されており、補聴器の使用により認知症リスクが低下するという研究結果もあります。

        ## 愛犬の変化に気づいたら：段階別の対処法

        ### 初期段階：環境の工夫で補う

        呼びかけへの反応が鈍くなってきた段階では、まず環境を整えることから始めます。2021年に私が担当した13歳のビーグルの飼い主さんは、以下の工夫で愛犬の生活の質を大幅に改善しました：

        朝の散歩コースを週に2回変更し、新しい匂いや景色で脳を刺激。「いつもと違う公園に行くと、まるで若返ったように鼻をクンクンさせていました」と飼い主さん。実際、認知トレーニングで脳を刺激することは、人間の高齢者でも認知機能の改善効果が示唆されています[4]。

        また、音による合図を視覚的な合図に切り替えることも有効です。手話のような簡単なジェスチャーで「おいで」「待て」を教え直すのです。ただし、この訓練には根気が必要。私の経験では、1日10分程度の練習を2〜3週間続けることで、多くの犬が新しい合図を覚えられました。

        ### 中期段階：安全確保と医学的介入

        壁にぶつかったり、狭い場所から出られなくなったりする頻度が増えたら、より積極的な対策が必要です。まず、家具の角にクッション材を貼り、床には滑り止めマットを敷きます。特に階段は危険なので、ゲートの設置が必須です。

        医学的には、DHA（ドコサヘキサエン酸）やEPA（エイコサペンタエン酸）を含むサプリメントの投与が推奨されます[4]。特に日本犬は、長い間魚を中心とした食生活を送ってきたため、他犬種に比べてDHAやEPAの要求量が高く、認知症を起こしやすいと言われています。

        2020年、私が相談を受けた15歳の秋田犬は、DHAサプリメントの投与開始から約1ヶ月で、夜鳴きの頻度が週5回から週1回程度に減少しました。「完全に元に戻ったわけではないけれど、家族みんなが眠れるようになりました」と飼い主さんは安堵の表情を見せていました。

        ### 進行期：介護と共生の覚悟

        認知機能が著しく低下した段階では、24時間体制でのケアが必要になることもあります。しかし、それは決して「諦め」を意味するものではありません。

        私が忘れられないのは、2019年に看取った17歳のミックス犬とその飼い主さんです。最後の半年間、その犬はほとんど寝たきりで、名前を呼んでも反応することはありませんでした。それでも飼い主さんは毎日話しかけ、優しく撫で続けました。「言葉は通じなくても、触れ合いで愛情は伝わると信じています」。その言葉通り、撫でられている時の犬の表情は、とても穏やかでした。

        
            #### 進行期のケアポイント

            ・円形サークルで安全な活動範囲を確保

            ・体圧分散マットで褥瘡予防

            ・定期的な体位変換（2〜3時間ごと）

            ・オムツの使用と清潔保持

            ・食事介助用の高さ調整可能な食器台

        

        ## 見逃してはいけない「他の病気」の可能性

        呼びかけに反応しない原因が、必ずしも聴力低下や認知症とは限りません。以下のような疾患でも、似たような症状が現れることがあります：

        まず疑うべきは耳の疾患です。外耳炎や中耳炎により、一時的に聴力が低下することがあります。2018年に診察したコッカースパニエルは、慢性外耳炎の治療後、呼びかけへの反応が劇的に改善しました。「まさか耳垢が原因だったなんて」と飼い主さんは驚いていました。

        甲状腺機能低下症も見逃せません。この病気では、全身の代謝が低下し、反応が鈍くなることがあります。血液検査で診断可能で、適切な治療により症状の改善が期待できます。

        さらに、脳腫瘍や脳血管障害なども考慮すべきです。これらの疾患では、認知症と似た症状を示すことがありますが、MRI検査により鑑別が可能です[4]。ただし、高齢犬への全身麻酔はリスクを伴うため、獣医師とよく相談することが大切です。

        ## 最新研究が示す「予防」の可能性

        認知機能不全の根治は現在のところ不可能ですが、予防や進行抑制については希望があります。カリフォルニア大学の研究では、定期的な運動、知的刺激、適切な栄養管理により、認知機能低下のリスクが有意に減少することが示されています。

        具体的には、以下のような取り組みが推奨されています：

        毎日の散歩では、ただ歩くだけでなく、匂い嗅ぎの時間を十分に取ること。嗅覚刺激は脳の活性化に直結します。また、知育玩具を使った遊びも効果的です。フードを隠したパズルトイは、問題解決能力を刺激し、脳の老化を遅らせる可能性があります。

        栄養面では、抗酸化物質を豊富に含む食事が重要です。ビタミンE、ビタミンC、ルテイン、ポリフェノールなどは、脳の酸化ストレスを軽減する効果が期待されています[4]。市販のシニア用フードの中には、これらの成分を強化したものもあります。

        さらに、日光浴も忘れてはいけません。体内時計を整え、昼夜逆転を防ぐ効果があります。私が担当した多くの認知症犬で、朝の日光浴により夜鳴きが改善したケースがありました。

        ## FAQ（よくある質問）

        
            Q1: 何歳から認知症のリスクが高まりますか？
            A: 一般的に10歳を超えたあたりから症状が現れ始め、13〜14歳で急増します。ただし、大型犬では8歳頃から、小型犬では10歳頃から注意が必要です。日本犬、特に柴犬は他の犬種より発症しやすい傾向があります。

        

        
            Q2: 聴力検査はどこで受けられますか？
            A: BAER（聴性脳幹反応）検査は、大学病院や専門的な設備を持つ動物病院で受けられます。費用は1〜3万円程度が相場です。ただし、日常生活での観察も重要な判断材料になります。

        

        
            Q3: 認知症の薬はありますか？
            A: 日本では認可された治療薬はありませんが、症状を緩和する薬剤はあります。DHAサプリメントや、場合によっては抗不安薬などを使用することもあります。必ず獣医師の指導のもとで使用してください。

        

        
            Q4: 夜鳴きがひどい時はどうすればいいですか？
            A: まず日中の活動量を増やし、夜は静かで暗い環境を作ります。それでも改善しない場合は、獣医師に相談を。安易に鎮静剤を使うと、認知症を悪化させる可能性があります。

        

        
            Q5: 認知症でも幸せに暮らせますか？
            A: もちろんです。適切なケアと愛情があれば、認知症の犬も穏やかに過ごせます。大切なのは、その子のペースに合わせ、できることを見つけて一緒に楽しむことです。

        

        
            ## 飼い主の声

            
            
                「最初は単なる老化だと思っていました。でも、獣医さんに相談して認知症だと分かってから、接し方を変えました。今は手話でコミュニケーションを取っています。完璧ではないけど、お互いの気持ちが通じる瞬間があって、それが何より嬉しいです」（東京都・60代女性・柴犬14歳の飼い主）
            

            
                「夜鳴きで家族全員が寝不足になり、正直限界でした。でも、日中の散歩を増やし、DHAサプリを始めてから、少しずつ改善しています。完治は望めなくても、一緒に過ごせる時間を大切にしたいです」（神奈川県・40代男性・ゴールデンレトリバー15歳の飼い主）
            
        

        ## 今日から始められる認知症予防

        愛犬が呼んでも振り向かなくなった時、それは新しいステージの始まりかもしれません。聴力低下も認知症も、早期発見と適切な対処により、進行を遅らせることができます。

        大切なのは、変化を「仕方ない」と諦めるのではなく、愛犬に合った新しいコミュニケーション方法を見つけること。15年間の動物病院勤務で学んだのは、どんな状態になっても、愛情は必ず伝わるということです。

        もし愛犬の様子に不安を感じたら、一人で抱え込まず、まずは動物病院に相談してください。適切な診断と早期の介入が、愛犬との残された時間をより豊かなものにしてくれるはずです。最後まで、共に歩んでいきましょう。

        
            ## 参考文献

            
                - Scheifele PM, Clark JG. Electrodiagnostic evaluation of auditory function in the dog. Vet Clin North Am Small Anim Pract. 2012 Nov;42(6):1241-57. doi: 10.1016/j.cvsm.2012.08.012. PMID: 23122179

                - Neilson JC, Hart BL, Cliff KD, et al. Prevalence of behavioral changes associated with age-related cognitive impairment in dogs. J Am Vet Med Assoc. 2001 Jun 1;218(11):1787-91. doi: 10.2460/javma.2001.218.1787. PMID: 11394831

                - Fefer G, Khan MZ, Panek WK, Case B, Gruen ME, Olby NJ. Relationship between hearing, cognitive function, and quality of life in aging companion dogs. J Vet Intern Med. 2022 Sep;36(5):1708-1718. doi: 10.1111/jvim.16510. PMID: 35932193

                - 小澤真希子. 犬と猫の高齢性認知機能不全. 動物臨床医学. 2020;29(3):101-107.

                - Hopper RG, Bromberg RB, Salzman MM, Peterson KD, Rogers C, Cameron S, Mowat FM. Dual sensory impairments in companion dogs: Prevalence and relationship to cognitive impairment. PLoS One. 2024 Oct 16;19(10):e0310299. doi: 10.1371/journal.pone.0310299. PMID: 39413072

            

        

        
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